フェイクニュースだったはずが、実話になった第一次安倍政権と統一教会

 今日、安倍元首相を手製の銃で殺害した山上被告の裁判が始まったので、昔の思い出話をメモとして残すことにする。

第1次安倍政権の時代の話

 政治に詳しくない方に向けて説明すると、安倍元首相は合計2回、総理大臣を務めたことがある。

・第1次安倍内閣:2006年9月ー2007年9月

・第2次安倍内閣:2012年12月ー2020年8月

 今回したいのは、第1次安倍内閣の話である。

 今のおそらく30歳未満の方からすると、まったくもって信じられないと思うが、2006年時点でインターネット、今でいうTwitterやFacebookほどの人気があった2chでは、安倍晋三は徹底的に批判されていた。批判されていたというか、もう叩かれてた。

 しかも、批判していたのは俗にいう「ネトウヨ」、つまり保守派、右翼側から徹底的に嫌われていたのである。当時確か高校生だった自分でも、お気の毒に思うほど叩かれていた。

安倍晋三は韓国の手先!!!

 政治には興味があったが、はっきり言ってネット(特に2ch)で政治の情報を得ると頭がおかしくなるので、「政治板」や「ニュース速報」なんてのは一切見なかった(n速VIPを除く)。「ソースはネット(笑)」といわれ、「2chにこう書いてあったから真実だ!新聞やテレビは嘘を流してる!」とか言い出す人間は2chねらーからすら馬鹿にされる。しかし、では政治の情報に全く触れないのかというと、そんなことはないのである。

 政治とは全く関係のない板に入り浸っていたとしても、政治の話をコピーペーストで無差別に張り付けていく(マルチコピペという)人間がいる。これは当然荒らし行為なので、あとで「あぼーん」(削除)されて、リモートホスト(プロバイダー)丸ごと規制されて関係ない人までしばらくの間書き込めなくなる羽目になるのだが、これをする人間がかなりいた。正直迷惑なのでやめてください。

 第1次安倍内閣時代、かなり頻繁に張られていたコピペが「安倍晋三は統一教会とつながりがある。保守ぶってるが韓国の手先だ。」みたいな内容である。統一教会含む、カルト新興宗教は大体「この高い壺を買えば、あなたや家族の病気が治る。」と嘯いて高い壺を買わせるのが常套手段であるが、ちょうど2chのトップページもなぜか巨大な「壺」の画像であったため、これにかけて壺のAA(文字で作った絵)と一緒にマルチコピペされていた。2006年は平成不況とはいえ、韓国と日本の国力の差は大きかったし、2chというところは大体差別万歳何でもありなインターネットスラムなところがあるので、とにかく韓国の手先みたいな政治家は真っ先に批判の対象になった。つまり売国奴ということである。

 まあ、なんというか2chでいう「極東板」とか、そういう隔離板(やばい話題が好きなヤバい連中を隔離するための板)や、Naver(今ではLINEを運営してる韓国の企業)という会社が「韓日翻訳掲示板」なる自動翻訳で日本語と韓国語を翻訳する、どっからどう見ても荒れそうな掲示板を運営してて、日本の馬鹿と韓国の馬鹿が直接対決できる最悪の場を提供していた、最悪の時代だった気がしなくもない。

 話がそれたが、つまり2006年時点で、安部元首相は統一教会とつながっているという話は広く流通していたのである。2022年の暗殺時にTwitter上で「安部元首相が統一教会とつながってるなんて嘘だ!」や「左派が安部元首相は統一教会とつながってると批判し始めたのもたまたまだ。」なる、現実の否認やたまたま論みたいなのが出始めて、個人的にはかなり驚いた。というか、政治に興味があるなら、安部元首相は統一教会とつながっているということはみんな知ってて当然だと思っていたからである。

「潰瘍性大腸炎で辞任した」はフェイクニュースだった「はず」

 第1次安倍内閣は、俗にいう「消えた年金問題」で大きな転機を迎える。はじめは、小泉純一郎首相(今の小泉進次郎議員の父)が不祥事もなく引退するので、その後任として何の問題もない状態で政権発足を迎えることができたが、消えた年金問題に対処しきれず辞任することとなる。

 「消えた年金問題」というのは、一言でいえば「ずっと年金を払い続けてきたのに、転職したときにその記録が消えてしまった。」という問題である。転職時に当時あった年金手帳に記載の番号が正しく次の雇用先にわたらなかったり、年金手帳の番号がいっぱいになってしまって、現地の社会保険事務所で応急的に番号の桁数を増やしたりしたので記録がめちゃくちゃになってしまったという事件である。

 正直なところ、安部元首相時代からずっと起こってきたことが、たまたまその時噴出したもので、首相の直接の責任ではないのだが、それでも行政府の長として対応する責任はある。この時、短期派遣(日雇い派遣)とかを大量に導入して、番号の突合せを行うなど対応していたのだが、問題はここからである。

 当時の安部首相は体調不良から、本当に突然辞任会見を行う。

 このころから、2chでは、今までとは真逆の「マルチコピペ」が張られることになる。それが「安倍元首相が辞任したのは持病の悪化であり、マスコミが言うような仮病や精神的な弱さからくる体調不良ではない。」というコピペである。

 安部元首相は持病があった。潰瘍性大腸炎である。これは確かに持病としてはあった。

 しかし、当時、辞任の理由は「体調不良」であり、「潰瘍性大腸炎」だとは言われなかった。実は「潰瘍性大腸炎ではない」のであった。

安倍首相、「機能性胃腸障害、全身が衰弱」 主治医会見 2007年09月13日19時25分

 これはWikipediaなどにも書かれていたが、内視鏡をいれてみてみたが、目に見える異常は発見できなかった。潰瘍性大腸炎というものは、大腸の中の壁に潰瘍、つまり通常とは異なる腫れたような状態になる病気であり、内視鏡でみてみて潰瘍があるはずである。

翌9月13日、慶應義塾大学病院に緊急入院。しかし、病院側の記者会見でも、内視鏡を入れて検査したが、目に見える異常は発見できなかったので「機能性胃腸障害」としたというのが医者の説明だった[62]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89#%E8%BE%9E%E4%BB%BB%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0

 つまり、潰瘍性大腸炎で辞職したというのは「フェイクニュース」だった。少なくとも2007年は。2chのマルチコピペが根拠で「報道が間違っている。」なんて言い出したら頭のおかしい人扱いである。

なぜか「潰瘍性大腸炎」の悪化で辞任したことになっていく

 病院側が潰瘍性大腸炎を否定したにもかかわらず、ネットでは「潰瘍性大腸炎の悪化で辞職した。」という謎の情報が出回る。つまり、持病を持った人間を追及したから悪化した。そのような「印象操作」を行おうとする人間がいたようである。

 当時、このような怪情報というのはネットでよく流れたものである。2005年、奈良県で「布団叩きおばさん」という人が話題になった。奈良県で近隣トラブルから、隣人に爆音を流して睡眠妨害などを行った人がいた。当時、報道機関でかなり話題になり、ワイドショーをにぎわせた人である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%88%E8%89%AF%E9%A8%92%E9%9F%B3%E5%82%B7%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 この布団叩きおばさんに関する、こんな怪情報が流れた。つまり、「布団叩きおばさんは実は被害者であり、報道機関が布団叩きおばさんを悪者にでっち上げた。」という内容である。こういう話が2chでマルチコピペされていった。しかし、結局はそういう事実はなかったようである。

 しかし、こういう「マスコミはこう報じているが、実はこうだった」という話は人間の良心の呵責を引き起こすらしい。この後、安倍元首相は「実はあの辞任は潰瘍性大腸炎であった」という話をし始める。特に、民主党政権が成立、その後迷走していったあたりからどんどん広がっていったような記憶がある。

 そして、第2次安倍政権成立。このころには、なぜか「第1次安倍内閣時代は潰瘍性大腸炎という持病の悪化で辞任することとなった(国会で追及した当時の野党はひどい)。」という話が通説となってしまった。

そして暗殺事件へ

 2022年7月、安倍元首相は暗殺された。そして、犯人の犯行の理由は統一教会と安倍元首相のつながりであった。

 先に、カルト新興宗教は大体「この高い壺を買えば、あなたや家族の病気が治る。」と嘯いて高い壺を買わせるのが常套手段であると書いた。

 そう。総理大臣であったが、長年苦しんだ持病で辞任した(本当か?)。その後、病気が治った。そして、再度総理大臣として就任した。

 統一教会にとって、最も「病気で不安を抱える信者」に対して訴えかけることができる、病気で一度は首相を辞任したが、病気を治して再度首相になった、そんな人が現れた。しかも、NHKなどで報じられたように、統一教会に応援のメッセージまで投稿してくれる。格好の広告台、それが安倍晋三元首相。

 暗殺されて、犯人が統一教会に恨みを持った人間の犯行だと知ったときに、一番初めに思ったことがこのことであった。

 安部元首相が第一次安倍内閣の時に、本当に潰瘍性大腸炎の悪化で辞任したのであろうか。仮に、実はそうでなかったとしたら。もし、「潰瘍性大腸炎の悪化で辞任した。」という話が世間に広まらなかったとしたら。もしかしたら、事件は起こらなかったんじゃないだろうか。と、今でも思う。

 おわり。

-2025-10-29 00:39 最終段落の一つ前の段落を追記-

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